金属塗装の前処理として行われる化成処理のひとつであり、表面をジルコニウムの皮膜で覆うことにより、金属本体の腐食を防ぎ、塗膜の密着性を高めてくれる働きがあります。代表的な化成処理として「リン酸亜鉛皮膜処理」も挙げられますが、リン酸亜鉛皮膜処理が化成処理の前に表面調整工程を必要とするのに対し、ジルコニウム化成処理は表面調整工程が不要であるため、工程の短縮化を図ることができるという特徴があります。また、リン酸亜鉛皮膜処理と同等以上の耐食性・密着性能・脱脂性能を持ちながら、環境負荷物質を低減させることに成功した次世代の環境対応型前処理薬剤といえるでしょう。
ジルコニウム化成処理の5つの特徴
1.スラッジ量90%以上低減
リン酸亜鉛と比較して、スラッジ量を90%以上低減させることに成功しました。これによりノズル・配管メンテナンス頻度を削減し、またスラッジ低減による品質向上を可能とします。さらにスラッジの低減により、結果として管理工数およびコストの削減を期待することもできます。
2.環境負荷物質の低減
ジルコニウム化成にはリン、亜鉛、ニッケル、マンガン等の重金属が一切含まれていません。またリン酸亜鉛と比較して、硝酸含有量を60%、フッ素含有量を50%削減できるなど、環境負荷物質の低下を実現できます。現在の塗装業界に求められる環境対応型の前処理薬剤と称することができるでしょう。
3.薬剤管理工数の削減
ジルコニウム化成処理では、表面調整が一切不要になるため、薬剤管理項目の低減により管理工数を削減することができます。さらにAZ濃度は管理が容易であることから、品質向上効果も期待できます。
4.酸性・アルカリ性の両者に優れた耐性
リン酸亜鉛と化成皮膜のpH変化における耐性を調査したところ、皮膜残存率について、ジルコニウム化成処理はアルカリ性・酸性領域のいずれにおいてもリン酸亜鉛より優れた耐薬品性を示すことが判明しました。
5.リン酸亜鉛と同等以上の耐食・密着性能
ジルコニウム化成処理は環境対応型前処理薬剤としての役割を重視されている一方で、その耐食・密着性等において、リン酸亜鉛等の既存の皮膜処理に劣るのではないか、という誤解が持たれていました。しかし実際には、リン酸亜鉛と同等か、場合によってはそれ以上の耐食・密着・脱脂性能が確認されており、現在塗装業界ではリン酸亜鉛からジルコニウム化成処理への切り替えが推奨されています。