DLC Coating DLCコーティング

DLCコーティング

DLCコーティングとは?

DLC(Diamond Like carbon)は歴史が古く、1970年代初頭にAisenbergとChabotにより発表されて以来、DLCはその定義も含めて多くの関心を集め、科学と技術の両面から大きな発展を遂げています。 その特徴はCVD法(化学気相析出法)やPVD法(物理気相析出法)等の薄膜形成プロセスにより、比較的容易に様々な材料にコーティングが可能で、かつ構造と物性が非常に多岐にわたる点にあります。また、含有水素量や添加元素(窒素、チタン、シリコン、フッ素、ボロン、タングステン等)を制御することにより、様々な材料特性の向上を図ることが出来ることから、工学的な応用を進めていく上で極めて潜在能力の高い材料になっています。近年では真空プラズマだけでなく、大気プラズマでも質の高いアモルファス化したカーボンを蒸着する技術が可能になってきています。

DLCコーティングの5つの特徴

1.多種・多機能の薄膜を実現

DLCは含有水素量や添加する元素により、様々な機能膜を形成することが可能です。これにより各種製品の用途に適合したコーティングを極薄膜(ナノレベル)で成膜出来ます。ヒバラコーポレーションでは、真空プラズマ法(CVD,PVD)と大気プラズマ法によるコーティングが可能です。

2.薄膜で高いガスバリア性

DLC膜は高いガスバリア性があり、酸化させないためにペットボトルの内面にもコーティングされています。工業塗装分野においても鋼材の酸化を抑えるため、非常に応用出来る技術といえます。

3.表面の親水性、疎水性制御

DLC膜は材料や処理プロセスにより、膜の表面を親水性、疎水性の何れにも制御できます。疎水性(撥水性)の機能をエアスプレーガンに適用し、ガン先端のノズルに塗料が付き難い機能を付与させる等、自社でも応用的に実用しております。

4.耐摩耗性にも寄与

DLC膜は薄膜でもビッカーズでHV2000~8000まで硬度がある膜を生成出来ます。そのため、金型や切削工具にも幅広く利用され、当社へもドリルの歯へのコーティングの依頼があり、適用したドリルの切れ味が持続することを確認しています。

5.樹脂へもコーティング可能

DLC膜は低温処理も可能なことから、樹脂にもコーティング出来ます。様々な素材へ目的に応じた機能膜を付加出来ることからあらゆる分野への応用が可能になります。

DLCコーティングの機能

  • ガスバリア性
  • 耐摩耗性
  • 潤滑性
  • 親水性
  • 疎水性
  • 低摩擦性
  • 防汚性
  • 耐蝕性
  • 低凝着性
  • 透明性
  • 絶縁性
  • 生命親和性

DLCコーティングの適応素材

SPCC:冷延鋼板、SPHC:熱延鋼板、SECC:電気鍍金鋼板、SUS:ステンレス、AL:アルミ、プラスチック、樹脂、ABS、ガラス等

DLCコーティングの長所と短所

長所
  • あらゆる素材に機能的な膜をコーティングすることが可能
  • 薄膜で機能性を付加出来るため、加工設計変更不要
  • プラズマによりDLC膜を除去出来るため、膜自体の再生が可能
短所
  • 設備導入費が高価(真空チャンバー、真空ポンプ、DC/RF電源等)
  • ランニングコストが高い(ガス、ターゲット、付帯設備等)
  • 真空チャンバー内で処理するため、ワーク寸法に制限がある

DLCコーティングの施行例

  • ボルトDLCコート
  • ノズル内面DLCコート
  • DLCカラーコート
  • 樹脂TiNコート

DLCコーティング工程

1. 真空立上げ

DLCの成膜は真空中でプラズマ処理するため、真空チャンバー(処理室)を高真空状態にします。ロータリーポンプでラフィング後にターボ分子ポンプで高真空まで立ち上げます。到達真空は、他の分子が成膜中に混入しないように、E-4からE-5Paまでポンピングを行います。

2.プロセスガス制御

CVD法では、プロセスガスとしてメタンなどの炭化水素ガスを用います。また、アシストガスとしてN2、O2等を混合させ、DLC膜の特性を変化させます。PVD法では、プロセスガスとして主に不活性ガスであるArを用います。

3-1. DLCコーティング(CVD法)

CVD法ではプロセスガスを流した状態でRF(高周波)を印加することにより、プラズマが発生します。このプラズマ中に発生するイオンやラジカルといった活性種を比較的低温に保った基材表面に照射することにより、水素を含有したDLC膜が生成されます。

3-2. DLCコーティング(PVD法)

PVD法ではプロセスガスを流した状態でマグネトロンにDC(直流)を印加することにより、グロー放電が起こり、ターゲットであるカーボンをスパッタリングすることにより、DLC膜が生成されます。PVD法は高真空状態で処理することから水素フリーDLC膜の生成が可能です。

4. 真空立下げ

DLCコーティング完了後、製品を取り出すために、真空チャンバー(処理室)を大気圧に戻します。一気に大気圧に戻すと真空チャンバー内の異物が巻き上がり、製品を汚染してしまうため、スローリークバルブを一定時間解放後、メインバルブを開放し段階的に大気圧まで戻します。

DLCコーティングに関するよくある質問

QDLC膜の膜厚はどのぐらいですか?
Aナノオーダーの膜厚になりますが、それでも十分な機能膜になります。
QDLCコーティングは何の材料で行うのでしょうか?
ACVD法では炭化水素ガス、PVD法では黒鉛(カーボン)のターゲットになります。
QDLCコーティング出来るワークサイズは?
ACVD法、PVD法でも処理可能なサイズが変わりますので、担当者まで問合せ願います。
Q製品の一部にだけDLCコーティングを行いたいのですが・・・
ADLCコーティングしたいエリアを指定頂ければ対応可能です。
QDLCコーティングする製品の耐熱温度が100℃しかないのですが処理可能ですか?
APVD法であればDLCコーティング可能です。
Q真空に耐えられそうにない製品ですが、それでもDLCコーティング可能ですか?
A大気プラズマで処理する工法もありますので、担当者まで問合せ願います。

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